2009年6月1日施行

第4条

「クルマを運転することを」を「ドライビング」と考え直そう


1997 十勝24時間レース[あ〜るMR2]

[前置]

 スポーツでも遊びでも運転が上手くて、カッコよければいい。そもそもスポーツも遊びに含まれると考えてもおかしくない。しか〜し、クルマをコントロールする事を甘くみてはいけない。筆者が参戦していたスーパーN1耐久で、2時間近く連続でサーキットドライビングを続けると体重が2kgくらい減ってしまい、マシンを降りると足元はフラフラする。歯を食いしばり過ぎて、アゴの骨が外れそうになる事もある。ブレーキングGや横Gに耐え続けながら、正確なドライビングを続けることはクルマとの格闘だ。
 耐久レースだけではない。サーキットを僅かに10〜15ラップ程度するだけのスプリントレースでも、ライバルと競いながら全力を出しきって走り続ける事は並大抵の集中力ではないのだ。ターマックモータースポーツ(舗装路を走るもの)には色々あるが、体を消耗する点でレースは最もスポーツ性が高いといえる。まあ、年をとってくるとパイロン広場でドリフトの基本練習を続けるだけでも体力消耗は半端ではないのだけど・・・
 サーキット走行を体験した事のない多くの方に「ドライビング」を理解いただくために、まわりくどい話からはじめよう。しばらく我慢して読み続けていただきたい。サーキットを走る事が目的でなくとも、必ず運転が上手になることを最初に約束しておく。


[推奨]

「クルマを運転すること」を「ドライビング」と表現すると、スポーティな印象を受けるだろうか? YESと答えた方は、この項を飛ばして読んでいただいても問題ない。NOと答えた方なのだが、その多くは「ドライビング」を固有名詞でなく「運転することを英語で言い換えただけ」と考えているだろう。この先を読み進めるにあたって「ドライビング」というのは「単なる移動目的でクルマを運転すること」ではなく「スポーツまたはアミューズメント目的でクルマを運転すること」と認識いただきたい。ただし彼女や家族をクルマで行楽地に連れてゆくのはアミューズメントではなく移動目的と考える。では「ドライビング」について。
「ドライビング」追求に最適な車種を絞り込めば、エンジンパワーがある、車重が軽い、豊富なスポーツパーツが準備されている、などが挙げられる。筆者が過去に4台も愛用したRX−7などは「ドライビング」追求車として最適な1台と考えられるが、RX−7とは全く相反するユーザー層を持つビッツ、デミオ、ロードスターなどによるナンバー付ワンメイクレースが盛況だ。
 一例で、リミッタ−を取り払えば簡単に200km/hを越える最高速度をマークしてしまうRX−7に対してビッツの最高速度が僅か140km/hほど。スポーツカーの代名詞のようなFR(フロント駆動リヤドライブでRX−7の場合は前後車軸の重量配分も50対50)であるRX−7に対し、ビッツは居住性や経済性重視の実用的FF1リッターベーシックカーである。どちらも日常のタウンユースが可能で、サーキットまで自走してゆける。ここで、一般公道では大きく価値観の異なる2種類の乗用車が同じサーキット走行を目的とする点に注目したい。
 奥さんが買い物に使っているビッツを足としてサーキット見物に出かけ、ペースカー誘導の体験走行を行なう場合とRX−7クラブ主催のサーキット走行会でサーキット初体験した場合などは「アミューズメントドライビング」と定義。ビッツにロールバーと4点式シートベルトを装着してレースに出てしまった場合、RX−7でサーキットに通いつめてラップタイムを縮める事を目的として走りこむ事は「スポーツドライビング」と考えよう。つまり「ドライビング」の場合、アミューズメントとスポーツの違いは段階や意識なのである。
 これは、そのままスキーやゴルフに当てはまるスポーツ論だが、決定的な違いは日常性。スキーやゴルフが無くなっても日常生活には支障なく、死に直面する可能性もきわめて低い。しかしクルマは違う。モータリゼーションと交通環境、その点でモータースポーツは非日常的と認識されがち。「ドライビング」は、ドライバーにモータースポーツを日常的なものと認識させ、そのことが日常生活における交通環境から身を守る手段にもなり得る、きわめて社会的に有用なスポーツなのである。



ドラテク皆伝第3条

ドラテク皆伝第5条

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