2014年2月1日施行

第35条

コーナリングすることを考え直せ


ステアリングが直進状態のままクルマが回頭してゆくコーナリング姿勢をゼロカウンターという


 昨年秋以来になってしまったが、第34条で書いた事を覚えているだろうか? 改めて読んでもらったとして、最も思い出して欲しいのは「ビギナーにハイグリップタイヤはオススメできない。・・・・」から最後まで。サーキットにおける速さの3大要素は「クルマ」「ドライバー」「コンディション」だ。もちろんタイヤ性能は「クルマ」に含まれる。まっ先にタイヤを挙げる理由は既に書いているから詳しくは省略するが、要するにエンジンやサスペンションの性能を上げていってもタイヤグリップが足りなければ速さを決める要素に「ドライバー」が占める割合が大きくなるからだ。速さの要素にドライバーの占める割合が高ければ、クラッシュのリスクは小さくなる。言い換えればクルマのコーナリング性能を落とす事でドライバーの仕事量が増えるという事。ここで改めて考えてみよう。サーキット走行において、またストリートのワインディングロードでもドライバーがクルマをコントロールしている喜びを最も感じるのはコーナリングだろう。最高速やゼロヨンバトラーでも「コーナリングが嫌い」という方は少ない。スポーツドライビングに限ったことではなく普通のドライブにおいても、クルマを自らがコントロールしている事をいちばん感じるのは「カーブを曲がっている時」「ステアリング操作をしている時」というドライバーが多い。
 これだけコーナリングの価値観がハッキリしているのに、サーキットを走るドライバーの多くがコーナリングよりもラップタイムに比重を置いている。スクールで反論が多いのは「ハイグリップタイヤには安心感がある」というもの。それは利にかなった意見なのだが本末転倒な考え方でもある。ハイグリップタイヤでないと安心できない速度域でコーナリングしようとするからイケナイのである。グリップの少ないタイヤでも安心出来るスピードで走れば何も問題ない。自分の腕前を棚に上げて無理をしようとする根底にはラップタイムがあるのだ。誤解しないで欲しいのだが、モノに頼る事を否定しているのではない。この連載はドラテクの話だから、身に覚えのある方は気分を害さないでいただきたい。ドライバー本人の意識というよりもサーキットの環境によるものだから仕方がない。しかし読者のために断言しておく。本当にドラテクを磨きたいのならビギナーはハイグリップタイヤを履いてはいけない。リスクの少ない場所(安全なサーキット)を選び、安心できる環境(イベント)を探して段階を踏んでドライビングを身に付けてゆく事が絶対に正しい。ラップタイムはドラテクを身につけた成果であるのが本来の姿である。
 3大要素のうち「クルマ」「コンディション」をイコールに出来るのだから、速さの差は「ドライバー」だけなのである。だからラップタイムランキングよりドライバーズランキング、時代はグリップよりもドリフトに向けられている。

ドラテク皆伝第36条

ドラテク皆伝第34条

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